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実家や田舎の家や物件を相続される際に、農地が物件として含まれているケースがあります。
登記簿上の地目が、『 田 』や『 畑 』になっていようなケースです。
農地の移転や用途変更については、農地法という法律を守らなければなりません。
相続された農地がある場合は、ここら辺の仕組みや意味合いを理解される事が先決になります。
農地法のある程度の仕組みを知らないと、売却や他の活用をするなりする為の手間やコストの見通しが、
よく見えないからです。
また、平成25年3月31日付で農林水産省は、これまで農地転用にあたるとして認めていなかった、
農地への太陽光パネルの支柱の設置を認めています。
農地に支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取り扱いにつき
取りまとめ、公表しています。(⇒農林水産省HP 『プレリリース』平成25年4月1日)
農地の活用方法についても、色々な手法が可能となってきています。
その前提として、まず農地法というものを大枠で理解される必要があります。
農地法を理解されるには、まずは農地法の第1条(目的)を読んでしまうのが、
一番早くてわかりよいかと思います。
〇 農地法
第1条(目的)
この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
少し堅苦しい文章かもしれません。
最初の下線部の『農地を農地以外のものにすることを規制する』 という所が一つの要部分です。
規制するのは行政サイド(日本国)ですから、自分たちの意思で勝手に決める事はできない。
という事になります。規制をするのですから、規制があるのが原則です。
その規制の手続内容は、県知事或は農業委員会への届出・許可等が必要となってきます。
又、後下線部の『もって国民に対する食糧の安定供給の確保に資することを目的』としています
ので、そう簡単には、自分たち(所有者さん)の言い分を認めてくれるわけではない。
とご理解させるといいですね。
農地法の許可や届出については、
条文からの理解よりも、具体例からの理解の方が早いかと思われます。
一つ一つ検討してみましょう。
〇 農地の相続(相続登記) ⇒ (相続登記後) 農業委員会に事後の届出のみ
相続によって農地を取得した場合は、農地法3条(農地の権利移動等)に基づく許可(農業委員会または県知事)を受ける必要はありません。
ただし、平成21年12月15日施行となった改正農地法により、相続等により許可を受けることなく農地の権利を取得した者は、農業委員会に新しく「届出」をしなければなりません。この届出は被相続人の死亡により権利を取得したことを知った日から10ヶ月以内です。期間内に届出を怠った場合は、10万円以下の過料に処せられる場合があります。
その後、農業委員会は、届け出を受理してから、農地の適正利用が図られるようにあっせん等も行います。(この届出は、権利取得の効力を発生させるものではありません。⇒別途、相続登記が必要という意味です)
相続登記の他に、農業委員会への届出が必要であり、怠っていると過料が発生する所が注意点になります。
〇 農地を農地として売却 ⇒ 農地法第3条の許可が必要
農地法第3条の許可による売却には、いくつかの条件が付いてきます。
譲受人(買主さん)のほうが、原則として耕作面積が50a(アール)以上ないと許可になりません。
また、よく使われる方法論としては、農地法の許可による売買ではなく、
農業経営基盤強化促進法による、農地を農地としての売買です。
譲渡所得税の一定枠までの控除と、登録免許税の減税措置がとられています。
活用事例も多い様です。
以下、農地を宅地にするには、市街化区域であるか市街化調整区域であるかによって変わります。
市街化区域内の場合
〇 自分の農地の自分の宅地とする ⇒ 農地法第4条の事前届出のみ
農業委員会への届出により農地から除外されます。届出により、即建築が可能となります。
建築時点では登記簿上は農地、家が建った後に法務局に宅地へ地目変更登記をします。
ここは、土地家屋調査士先生へのご相談が必要です。
〇 自分の農地を農地以外への転用目的で売却する ⇒ 農地法第5条の事前届出のみ
通常は買主さんが見つかれば、農地法第5条届出を農業委員会を経由して都道府県知事に提出。
その後、田や畑の地目のまま売却(所有権移転)が可能です。
建築時では登記簿地目は田や畑ですが、家が建った後に法務局へ地目変更登記で宅地となります。
地目変更登記は、土地家屋調査士先生への依頼が必要となります。
市街化調整区域の場合
〇 農業振興地域の農用地区域内の農地転用 ⇒ かなり難しい
農地以外での土地利用が厳しく制限されています。原則として農地転用が許可されません。
農業振興地域制度上からみて農用地区域からの除外が適当かどうかの判断が厳格になされる、
併せて農用地区域から除外された場合、転用が可能かどうかについての審査も行われます。
この両者について条件が満たされる場合に限り、農用地区域からの除外が認められます。
〇 自分の農地を自分の住宅、工場、駐車場等にする ⇒ 農地法第4条の許可が必要
自分の農地(市街化調整区域内)を自分の宅地とするには、農地法第4条許可が必要です。
上記の農業振興地域でない場合は、農業委員会の農転法第5条の許可が必要です。
許可されれば、即建築可能ですが、難易度は高いと言われているようです。
この時点で登記簿上は農地ですが、家が建った後に法務局に地目変更登記をして宅地になります。
〇 自分の農地の農地以外のものにするために売買・賃貸借する
⇒ 原則的に、農地法第5条の許可が必要
農地を農地以外のものにする、これらの土地につき売買等により所有権を取得する場合、或は、
賃貸借契約や使用貸借契約等により農地等を借りる場合等には、 農地法5条の許可が必要です。
但し、農地所有者自らが利用するための農業用施設(2アール未満のものに限る)設置する場合
市街化区域内にある農地等を転用する為、あらかじめ農業委員会に届出た場合等は、許可を要し
ない場合もあります。
・・・以上が、農地の売買の大まかな数例のパターンです。
なかなかややこしいです。
農地法の『農地を農地以外のものにすることを規制する』言葉の意味の大変さがよくわかります。
市街化区域内であるかないかによって、大変さが随分と変わる。
市街化区域内であればなんとかなるが、市街化調整区域であれば難易度が高くなる。
という理解をされておかれれば良いかもしれません。
また、農地法絡みの手続きについては、行政書士の先生への協力も必要となってきます。
以上が、大まかな農地法の仕組みとケースになります。
その話を前提として、近年随分と活用されているのが、
『農地に太陽光パネル等を設置できるかどうか』という内容になります。
農林水産省が取りまとめ、公表をされた事の意味合いの大きさです。
今までなかなか活用(転用)が難しかった農地に関して、一時転用を大幅に認める内容となっています。
国の先を見据えたエネルギー政策(自国内発電システム)が大きく作用しているようです。
『農地に支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて』)
内容については、概ね以下の通りです。
支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等については、下部の農地で農業生産が継続されるよう確保する必要があり、また、周辺の営農に影響を与えないことが重要となる。
このことから、支柱の基礎部分が農地転用に該当するため、以下のように対応することとし、平成25年3月31日付けで各地方農政局長等へ通知をした。
・支柱の基礎部分について、一時転用許可の対象とする。
・一時転用許可期間は3年間(問題がない場合には再許可可能)。
・一時転用許可に当たり、周辺の営農上支障がないか等をチェック。
・一時転用の許可条件として、年1回の報告を義務付け。農産物生産等に支障が生じていないかをチェック。
近年、支柱を立てて営農を継続するタイプの太陽光発電設備(太陽光パネル)等が、
新たに技術開発されて実用段階となっています。
メガソーラーといわれるような、土地に設置されるタイプのものです。
このようなケースについて、農地転用許可の対象となるか否かを明らかにする必要が生じている
ことから、取扱いについての取りまとめとなっています。
ここでの注意点は、営農をきちんとされておられる方の農地についての一時転用を認める。
という部分でしょうか。
営農(=農業を営む事)をされていない方では、制度利用ができません。
ですので、実家の農地の相続の際に、農地上にこの太陽光パネルの活用をされるのであれば、
当然に、相続人の方がその実家で農業を営む事が必要である。という事になります。
(追記:令和2年12月10日現在において
農林水産省HPにおいて、再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可について
わかりよく説明がなされています、ご必要の方はまたご参照くださいませ。
参照HP: 農林水産省 再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可 )
また、そのようなつもりもなく、実家も誰も住む予定がなく、売却処分を検討される場合は、
実家の土地建物の他に、農地の処分という事も出てくるという事を理解される必要があります。
そしてその農地の売却処分については、上記パターンの農地についての届出や許可の話が出てくる。
という事になります。
相続登記をする司法書士だけでなく、農地法の許可関係については行政書士の先生との協力、
地目変更等については、土地家屋調査士先生との協力が必要となります。
ワンストップなり、協力ネットワークがある専門職への依頼相談が必要となってきます。
『 田 』 『 畑 』 というと、何か大きな財産の様なイメージがありますが、
いざ売却・処分を検討される段階では、許可や届出といった大変な側面も出きます。
農地の相続登記については、農業委員会への事後届出で済みますので簡単な部分もありますが、
その相続登記が終わってからどうされていくかのほうが、労力がいる部分ですね。
有用な活用が出来ていけば良いですね。
大事な亡親の大事な遺産ですので、丁寧で慎重な検討をされる事が吉かと思います。
またご相談がある方は、お気軽に。
有用な活用や処分方法になることを願っています。
有難うございました。
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